【2027年1月開始】新設される特例月変の仕組みと実務対応
病気の治療や育児、家族の介護といった私生活と仕事のバランスをとるため、勤務時間を短縮したり、残業を控えたりする就労調整を行う方が増えています。
しかし、このような働き方の変更に伴って「給与が下がっても、数か月間は高い社会保険料が引かれ続ける」という大きな課題がありました。
こうした従業員の経済的負担を軽減するため、2027年(令和9年)1月1日より、標準報酬月額に関する新しい特例措置(通称:特例月変)がスタートします。
今回は、通達の内容を要約して、分かりやすくお伝えするコラムです。
従来の課題:給与は下がっても、保険料は下がらないタイムラグ
まずは、従来の社会保険の仕組み(通常の随時改定=いわゆる「月変」)を確認しておきましょう。
通常の月変では、給与に大きな変動があった場合、変動した月からの3か月間の平均給与を算出し、その結果に基づいて4か月目から新しい標準報酬月額に変更されます。
従来のタイムラグの例
【従来のタイムラグの例】
・4月から介護のために勤務時間を短縮し、給与が大幅に下がったとします。
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・4月、5月、6月の給与をベースに計算し、標準報酬月額が改定されるのは7月(実際に保険料が変わるのは8月給与から)となります。
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👉 つまり、給与が下がった4月から7月までの間は、給与が減ったのに、保険料は高いままの金額が引かれ続けるという状態が発生していました。
これが、療養や育児、介護をしながら働く従業員の負担の1つとなっていました。
2027年1月スタート!特例月変の仕組みと3つの特徴
こうしたタイムラグを解消し、仕事と療養・育児・介護の両立を支援するために新設されるのが、2027年1月1日適用の特例月変(保険者算定の特例)です。
この新制度には、従来の月変とは異なる大きな特徴が3つあります。
特徴①:給与が下がった翌月から保険料を改定できる
要件を満たした場合、通常の3か月を待つ方式ではなく、報酬が減少した月の翌月から新しい標準報酬月額に改定することができます。
これにより、従業員の経済的負担を早く軽減できます。
特徴②:固定的賃金の変動がなくても対象になる
通常の月変では、原則として基本給などの固定的賃金の変動がなければ手続きはできませんでした。
しかし今回の特例では、療養・育児・介護のための就労調整(所定労働時間の短縮や時間外労働の抑制など)による給与減少であれば、固定的賃金の変動の有無にかかわらず対象となります。
特徴③:3か月間の実績を待たずに対応
通常の月変のように3か月間の平均を待つことなく、報酬減となった初月の報酬を元に手続きを進めることができます。
適用するための3つの要件
この特例月変を利用するためには、次の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
要件①:就労調整の理由が「療養」「育児」「介護」のいずれかであること
療養とは:本人の治療等、または家族の治療等に伴う看護等
育児とは:小学校就学の始期に達するまでの子の養育
介護とは:介護保険法に基づく要介護・要支援認定を受けている家族の介護
要件②:標準報酬月額が2等級以上低下し、その状態が3か月以上続くことが見込まれること
その月限りや2か月ではダメということです。
要件③:特例措置による改定について、対象者が書面で同意していること
標準報酬月額が下がるということは、短期的には保険料の軽減によるメリットがあります。
しかし、長期的に見ると年金や傷病手当金・出産手当金が減るデメリットも生じます。
この制度は、対象者に必ず実施しなければならないものではなく、任意の制度なので同意を得る必要があるということです。
注意:対象とならないケース
・被保険者期間が、報酬減となった初月を含めて3か月未満の者
・報酬減となった初月の翌月に被保険者資格を喪失する者
・報酬減となった初月の支払基礎日数が、原則として17日(短時間労働者は11日)未満となる月
・報酬減となった初月の全部にわたって勤務せず、報酬が一切支払われなかった場合
実務上重要となるポイント
① 報酬が増加したとき(就労調整終了時)も届出が必要
特例月変によって標準報酬月額が下がったあと、療養や育児、介護の状況が落ち着き、就労調整が終了・縮小したことで報酬が増加し、標準報酬月額が2等級以上上昇した場合は、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、速やかにその旨を届け出て改定しなければなりません。
下げるだけでなく、戻る際にも手続きが必要な点に注意が必要です。
② 特例月変後の定時決定(算定)は忘れずに
ただし、通常の定時決定と同様、7月・8月・9月に随時改定または特例措置による改定が行われる場合には、定時決定の対象外です。
③ 本人への説明と同意
保険料が下がる一方、将来の年金給付や傷病手当金・出産手当金の額も連動して減少するため、事前に十分説明し、書面で同意を得ることが必須です。
④ 関連書類の保存
届出内容の根拠となる書類(就労調整を行う原因となった療養等の事実を証明する書類など)は、届出の日から2年間、事業主において確実に保存する必要があります。
おわりに
あくまでも任意の制度ではありますが、うまく活用することで生活と仕事の両立を進めることにもつながります。
コラム投稿時点では厚生労働省や日本年金機構のホームページでリーフレットやQ&Aは確認できませんが、近いうちにリリースされると思います。
対象となりそうな従業員がいる場合には、早めに正確な情報を得られるよう、アンテナを張っておきましょう。

