諭旨解雇と諭旨退職の違い

はじめに

多くの会社の就業規則を見ると、懲戒規定に「諭旨解雇」や「諭旨退職」の条項が定められています。

厚生労働省の『モデル就業規則』には「諭旨解雇」や「諭旨退職」の規定例がないことから、様々な事情や背景があって規定したものと思われます。

そして「諭旨解雇」や「諭旨退職」を適用させる機会はそう多くないことから、違いがよくわからないこともあります。

今回はその違いがイメージできるコラムです。

前提として、専門家によって様々な見解があるテーマであることをご留意ください。
就業規則への規定次第で位置づけや解釈が会社ごとに異なることがあります。

諭旨とは

趣旨や理由を諭し、告げることをいいます。

会社が対象者に趣旨を説き聞かせる程度の温情があることが懲戒解雇とは異なる部分です。

懲戒解雇相当ではあるものの、少し程度を軽減した懲戒処分と考えればよいと思います。

諭旨解雇とは

一般的に懲戒解雇と諭旨解雇の違いは「退職金」にあります。

例えば懲戒解雇において退職金が不支給や減額を伴うのに対し、諭旨解雇では通常の乗率で支給するケースが多いです。

諭旨解雇は「懲戒」が土台にある「懲戒解雇よりやや軽微な解雇」ですので、相当性と合理性を高いレベルで説明できなければなりません

諭旨解雇と普通解雇の違い

余談ですがここで諭旨解雇と普通解雇の違いを整理しておきましょう。

諭旨解雇:[前提] 懲戒処分である。
     [根拠] 懲戒規定の「懲戒の事由」に抵触したとき。
普通解雇:[前提] 懲戒処分ではない。
     [根拠] 就業規則の「(普通)解雇事由」に抵触したとき。

つまり、前提と根拠が大きく異なります。

いずれも解雇ですので、相当性と合理性は必要です。

諭旨退職とは

一般的に期限を設けて退職届(退職願)の提出を求め、退職を促すことをいいます。

これに応じた場合には、解雇ではなく合意退職(または辞職)として扱うことになります。

注意点としては退職届(退職願)が提出されても、それは懲戒としての結果ですので前述のように相当性と合理性が説明できなければなりません

諭旨退職の難しい部分としては、退職届(退職願)が提出されたとしても、それが対象者の本意であるか否かという点にあります。
(これを「意思表示」といいます。)

例えば、勘違いや強迫によって対象者から退職届(退職願)が出された場合、その退職という意思は無効になります。

Q&A

Q:諭旨退職に応じない場合は?

A:多くの諭旨退職規定には「いつまでに応じなければ懲戒解雇とする」とされていますので、そのとおりに進めることとなります。
  万が一そのような規定がない場合には諭旨退職にすることができないため、別のアプローチを検討することになります。

Q:規定の題名は諭旨解雇ですが、規定内容は退職届(退職願)を求めています。この場合は?

A:諭旨解雇においても退職届(退職願)を求める規定はよくあります。
  重要なことは、その規定が「解雇(会社からの一方通行)」「退職(会社と労働者の合意または労働者からの一方通行)」のどちらを求めている内容になっているかということです。
  わかりにくいということは会社と従業員の双方にメリットがないので、専門家に相談して修正するのがいいでしょう。

おわりに

これまでの内容を簡単にまとめると次のようなイメージになります。

諭旨解雇:懲戒解雇よりいくらか軽い、懲戒処分としての会社からの一方的な雇用契約の終了

諭旨退職:懲戒処分に基づいた退職勧奨(合意退職)

どちらがいいという性質のものではありませんが、重要なのは「規定に従い、正しく実施する」ことです。

会社の実態に即した規定を作り、正しく運用するためにも、専門家をフル活用することがトラブル防止の基本です。