同一労働同一賃金の基本と改正点
2026年10月1日、同一労働同一賃金に関する施行規則と告示が改正されます。
ガイドラインについては、2018年12月28日告示第430号として正式なガイドラインが告示されてから初めての見直しとなります。
今回のコラムでは同一労働同一賃金の最も基本的な部分を確認してみることと共に、改正のポイントをおさえていきます。
そもそも同一労働同一賃金とは?
会社に雇用される正規雇用と非正規雇用との間における不合理な待遇の相違や差別的取り扱いをなくすことを目的とするものです。
なぜ「日本版」というのかについては、同一労働同一賃金の主流であるヨーロッパとは単位が異なるためです。
ヨーロッパは会社単位ではなく産業単位、日本は産業単位ではなく会社単位である部分に相違があります。
同一労働同一賃金の根拠となるものは?
パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)のうち、
第8条で「均衡処遇」、第9条で「均等処遇」を定めています。違いは次のようになります。
(第8条)均衡処遇:バランスの取れた処遇を行うこと。(=不合理でなければ差異があってもいい。)
(第9条)均等処遇:差異を設けてはならない。(=完全に同じにする必要がある。)
均衡処遇・均等処遇ができていないとどうなる?
パートタイム・有期雇用労働法は大きく分けると「労働行政」に区分されます。
すなわち、均衡処遇・均等処遇に問題があった場合、同法を管轄する労働局による行政指導の対象となり得ます。
なお、2022年12月から労働局と労基署の連携強化の方針が発表されています。
完結にまとめると、本来同法の管轄外であった労働基準監督署からも労働局に企業の情報が伝えられることになりました。
これにより、労働局による迅速な調査や指導が行われる仕組みに変わったということです。
また、行政指導を経ることなく、いきなり訴訟ということも十分考えられます。
[余談]均衡処遇・均等処遇は別の法律に規定されていた
元々、均衡処遇・均等処遇に関する規定は『労働契約法』に定められていました。
しかし、労働契約法は「労働民法」という位置づけであり、この法律を理由に行政指導することはできません。
時代や社会情勢の変化に伴い、均衡処遇・均等処遇に関する裁判が増え、そのままでは司法が逼迫してしまいます。
そこで「労働行政」にあたる『パートタイム・有期雇用労働法』に移設することで行政指導が可能になります。
行政指導の対象とすることで司法の逼迫を抑え、原則である自主解決に導こうと考えていたかもしれません。
均衡処遇・均等処遇の違反となったらどうなる?
「均衡処遇」の違反となった場合、基本給や手当であればその差額相当分の損害賠償となります。
しかし、違反となった労働条件をどのように修正するかまで司法や行政は求めませんし、求めることもできません。
つまり、その修正については会社と労働者が自主的に解決していくことになります。
正規雇用と同一の処遇に引き上げるもよし、労使協議・合意で折衷案を導入するもよしとなります。
「均等処遇」の違反は会社にとって舵取りが難しくなります。
均等処遇は差異を設けてはならないことから、正規雇用と同一の処遇に引き上げることが基本的な処置となります。
しかし、中小企業ではそのような体力がない場合も考えられます。
それを防ぐために正規雇用者の労働条件を引き下げようものなら、離職により人手不足を加速化させるだけでなく、新たな訴訟リスクも発生しかねません。
2026年10月のガイドライン変更
ガイドラインの変更
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 賞与・退職手当 | 【前提】賞与・退職手当の性質・目的として、労務の対価の後払い、功労報償等の様々な性質・目的が含まれる。 これらの性質・目的が(均等・均衡待遇に)妥当するにもかかわらず、非正規雇用労働者に対し、 通常の労働者との間の職務の内容等の相違に応じた均衡のとれた内容を支給しない場合、不合理と認められるものに当たりうることに留意。 ➡賞与や退職金の「性質・目的」が分水嶺になるということ。 |
| 無事故手当 | 通常の労働者と業務の内容が同一の非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の無事故手当を支給。 ➡事故の有無が賃金の相違の説明として困難であるということ。 |
| 家族手当 | 労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給。 ➡少なくとも所定労働日数や所定労働時間と比例した設計にして支給することが望ましい。 |
| 住宅手当 | 住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、 通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給。 ➡パートや有期雇用の従業員に「転居を伴う配置の変更」の実態があるのか、その必要性があるのか検証しましょう。 |
| 病気休職・休暇 | 労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者にも、 通常の労働者と同一の病気休職・休暇(療夏季冬季休暇褒賞養への専念を目的とした休暇に限る)期間に係る給与を保障。 ➡無給・有給を揃えたうえで、所定労働日数や所定労働時間と比例した制度への再設計が望ましい。 |
| 夏季冬季休暇 | 非正規雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与。 ➡少なくとも所定労働日数や所定労働時間と比例した設計にして付与することが望ましい。 |
| 褒賞 | 褒賞であって、一定の期間勤続した労働者に付与するものについて、通常の労働者と同一の期間勤続した非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与。 ➡永年勤続表彰などが該当。雇用形態変更の可能性まで考慮した設計にするとなお良いでしょう。 |
雇い入れ時の労働条件明示事項に追加
| 変更後 | 変更前 |
|---|---|
| ・昇給の有無 | ・昇給の有無 |
| ・退職手当の有無 | ・退職手当の有無 |
| ・賞与の有無 | ・賞与の有無 |
| ・相談窓口 | ・相談窓口 |
| ・待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨 ←New! |
<労働条件通知書または雇用契約書への記載例>
次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
部署名:●●部○○課 / 担当者職氏名:○○課長 ■■■■ / 連絡先:XXXXXXXXXXX
なお、従前からある相談窓口と一本化することでも差し支えありません。
雇用管理の改善等に関する措置の内容
こちらは留意事項・配慮事項が中心なので、普段から労務管理への意識があればシビアになる必要はありません。
概要としては次のものが挙げられます。(厚生労働省のリーフレットはこちら)
☑パートタイム・有期雇用労働者にも職業能力開発法の適用があることに留意する。
☑公正な評価に基づき賃金を決定するよう留意する。
☑パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者の要件等について留意する。
☑福利厚生施設の利用に関する便宜の供与の措置を講ずるように配慮する。
☑正社員転換推進措置の実施方法等について工夫、配慮、留意する。
☑待遇差についての説明方法を工夫する。
☑労使の話し合いを促進するための方法を工夫する。
おわりに
すでに同一労働同一賃金に対する重要性やその認知は進んでいることと思います。
今回のガイドライン変更にあわせて「同一労働同一賃金の対策が進んでいるか」「対策が漏れていればどのような措置を講じるか」を考えてみましょう。
裁判ではガイドラインの影響を受けた判決も少なくないことや昨今の人手不足の観点からも早めに対応していくことが望ましいです。
当事務所では、同一労働同一賃金に対応する制度設計・規則改定のご相談を既に承っています。
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