管理監督者の要件を見直そう

管理監督者とは

労務トラブルのよくある一つに挙げられる「管理監督者」。

その適用を受けるか受けないかで賃金のトラブルに発展しやすいことはご存じのことと思います。

一般的には以下の要素すべてに該当することで管理監督者性を有しているとされます。
 ・会社の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権があること。(経営との一体性)
 ・自身の労働時間について広く裁量を有していること。(労働時間の裁量)
 ・管理監督者にふさわしい賃金等の処遇を受けていること。(適正な処遇)

今回は、これらの要素を解説していきます。

管理監督者の「経営上の決定への参画」とは

事業を進めるにあたっては、様々なタイミングで経営上の判断(決定)が必要となるときがあります。

このような決定にどの程度関与しているかという実態が管理監督者性において重要です。

具体的には、以下のような実態が見られることになります。
 ・経営の判断(決定)における過程がどのようになっているのか。
 ・経営の判断(決定)に関与しているか。
 ・関与した際の発言や影響の程度がどれほどあるのか。

つまり、経営の判断(決定)に参加しているだけでは十分でなく、発言力や影響力まで加味する必要があります。

ありがちなのが「重要な仕事を一任しているから管理監督者である。」という認識でいると危険です。

業務の重要性と経営との一体性は別物であるという視点を忘れてはいけません。

管理監督者の「労務管理上の決定権」とは

上述のように経営に参画するほどの職務であれば、その職責に比例して権限も幅広く有していなければなりません。

具体的な労務管理上の権限としては、以下のようなものを挙げることができます。
 ・採用
 ・シフト決定
 ・年次有給休暇の時季変更権
 ・人事考課
 ・退職
 ・解雇

会社の規模や組織編制などの実態から、すべての権限がなければいけないという訳ではありません。

管理監督者としての権限が客観的に見て適切か否かという点が重要です。

管理監督者の「労働時間の裁量」とは

管理監督者には労働時間の概念が基本的には当てはまりません。

例えば、以下のような事実の有無が管理監督者性を判断する際に注視されます。
 ・始業時刻、終業時刻といった労働時間管理の有無
 ・遅刻、早退、欠勤による賃金控除の有無(労働時間管理をしているからできること)
 ・厳格な業務報告の有無
 ・出張など業務遂行上の上長の許可の有無

2019年4月1日に働き方改革の一環として、事業主に労働時間の把握義務が課されています。
これにより「管理監督者の労働時間も実質的に管理しているのでは?」との議論もあります。

ここではその議論は置いておき、重要なことは労働時間の管理と把握は目的が異なるということです。
 □ 労働時間管理 ➡ 管理監督者性の判断要素の一つ
 □ 労働時間把握 ➡ 健康管理や長時間労働抑制

少なくとも賃金控除や業務報告、許可などは管理監督者性を明確にするためにも整備しておきましょう。

管理監督者の「適正な処遇」とは

いわゆる賃金のことです。ここは比較的意識が高い部分であると実感しています。

しかし、管理監督者の賃金設計にあたっては、管理監督者ではない従業員との「逆転現象」まで注意を払う必要があります。

つまり、通常の従業員の残業代を考慮した上で、なお管理監督者の賃金に優位性を持たせる設計にしなければなりません。

単純に固定部分だけでの比較では、足元をすくわれるおそれがあるため、十分検証しましょう。

おわりに

管理監督者は、適切な仕組みと運用の実態が求められる難しいものです。

トラブルになった際は、高額な未払賃金が発生する場合もあります。

導入を検討していたり、既に導入済みだが不安があるという場合は、専門家に相談してみましょう。