労使トラブル(命令違反編)

はじめに

こちらも以前からよくある事例の一つである「業務命令に従わない従業員をどうすればいいのか」というものです。

この事例での主なタイプは、以下のようなものを挙げることができます。
 ・自分が正しく、上司の指示が間違っていると思い込んでいる従業員。
 ・自分の利益や評価に繋がらないと思い込んでいる従業員。
 ・何かのきっかけで関係性が悪化し、感情的な反応しかしない従業員。

業務を指示する側が疲弊してしまうことから、当たり障りのない対応をしてしまうことがよくあります。

しかし、能力不足編でも述べたように看過することでより悪化してしまうので、適切な対応が必要となります。

事案ごとに都度注意や指導をする

これは上司であれば基本的に実施していると思いますが、「都度」が重要です。

回数や期間は、業務指示に従わない従業員の改善見込みの有無を判断する要素の1つになります。

仮に数箇月のうちの複数事案に対する注意・指導をまとめておこなったとしても、それは1回です。

昂る感情を抑えて、その都度冷静に淡々と注意や指導を重ね、その記録を残しておきましょう。

文書を活用する

上述の注意や指導で改善されればいいですが、事態が好転しないこともままあります。

そのような場合は、さらに上の役職者や役員の名前で業務命令を文書で発出することも検討しましょう。

注意しておくことは、文書を受け取った従業員がそれをシュレッダーなどで廃棄し、「受け取っていない」と主張することもあります。

このような事態を防ぐためにも、文書に通し番号を入れ、控えや写しなどを会社が残しておくことも必要です。

懲戒処分を実施する

注意や指導を聞き入れず、文書を交付してもなお命令違反を繰り返すようであれば、懲戒処分を検討する段階です。

これは従業員に対する効果だけでなく、会社の秩序や規律を維持する点からも必要な処置になります。

ただし、懲戒処分は法令や規則を厳格に適用しなければならないため、実施には注意が必要です。

足元をすくわれないようにするためにもトラブル対応に強い社会保険労務士や弁護士に事前に相談されることをお勧めします。

人事考課に反映する

意外と見受けられるのが、懲戒処分をしたものの対象期間の人事考課が標準評価(または高評価)であることです。

会社や考課者にも様々な事情や背景があると思いますが、信賞必罰は徹底しましょう。

このような不公平感は、形には見えずとも従業員全体に波及し、組織力の低下を招くこともあります。

ただし、低い評価をするにしても、恣意的であってはならず、その程度感は慎重に検討してください。

おわりに

業務命令は、会社が広く有する権利の一つですが、無制限ではありません。

懲罰的であったり、退職勧奨と解されるような業務命令は違法となるおそれがあります。

記録を残しながら時間をかけ、段階を経て対応しましょう。

必要に応じて専門家(社会保険労務士、弁護士)にご相談されることもお勧めします。