出向は就業規則に規定があれば業務命令だけで可能?

結論としては「不十分」

一般的な就業規則には「~出向を命じることがある。」というような規定が置かれていることが多いです。

これだけを根拠に会社が一方的に出向を命じることができると断定してしまうとトラブルの元になりかねません。

それでは出向を命じる際にどのようなことに気をつけることが大切なのでしょうか。

今回はその大切な部分を簡潔にお話していこうと思います。

出向に関する法律

出向は労働契約法第14条に定められており、条文は次のとおりです。

(出向)
使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

まず「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合」とは何かを考える必要があります。

このヒントになる内容を最高裁判所が判示しています。

最高裁判所の判示

では最高裁判所が「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合」をどのように判断したのか要約を見てみましょう。

・就業規則には、「会社は従業員に対し業務上の必要によって社外勤務をさせることがある。」という規定があること。
・適用される労働協約にも「社外勤務の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格・昇給等の査定その他処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられている」こと。
(新日本製鐵[日鐵運輸第2]事件 最判平15.4.18労判847-14)

つまり就業規則だけではなく、出向に際しての重要な労働条件が規定されている事情も含めて、はじめて個別の同意を要せず就業規則等の定めだけで出向できるといった内容です。

権利濫用も重要なポイント

就業規則に定めがあり、出向中の重要な労働条件などが定まっていたとしてもそれでOKとはなりません。

出向を可能とするには、使用者の出向命令が「権利を濫用」していないということが重要です。

具体的には「出向の業務上必要性」や「出向による労働者の不利益」などもしっかり検討しましょうということです。

これが法律で示すところの「その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用」にあたります。

おわりに

出向は通常の“使用者-労働者”の関係性ではなく、“出向元-出向者-出向先”の三者が関係するため仕組みを十分理解しておく必要があります。

労働契約も複雑に入り組むことから、事前によく検証しておかないとトラブルの原因となってしまいます。

そして兼務出向ともなると権利義務関係がより複雑化するので、トラブルのリスクがさらに高まることもあります。

場合によっては偽装出向となり、派遣法や職業安定法に抵触することもあり得ます。

出向を命令する前に専門家へ相談されることをお勧めします。