労災申請と事業主証明
はじめに
昨今の労災申請においてよくあるケースは「精神疾患」です。
会社側では私傷病が理由だと思っていたところ、突然従業員から労災の給付請求書の証明を依頼されるケースもよく聞きます。
このようなときに会社側がどのような対応をすることが適切か、今回はこのテーマをコラムにしました。
5分から10分程度で読めますので、ぜひご一読ください。
してはいけないこと
たまに聞くのは「そんなのは労災ではないから申請しない」と会社側で判断してしまうことがあるようですが、これは避けてください。
あくまでも労災申請をするかしないかの判断は従業員(労働者)がすることです。
そして労災か否かを判断するのは労働基準監督署です。
まずはこの2点をおさえておくことが大切です。
事業主証明とは
労災の請求書には事業主が証明する欄があります。
これは労働者災害補償保険法施行規則第23条第2項に次のように規定されていることから設けられています。
事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。
会社内で怪我をした場合などは、上司や同僚などが現認していることが多く、証明することにためらうケースは少ないでしょう。
しかし、精神疾患などはその証明が難しく、業務以外に原因があるのではないかと会社側は考え、従業員との認識にズレが発生することもしばしばあります。
まずは会社側が請求内容に異議があるのか、ないのか精査することを徹底しましょう。
請求書の内容に異議がある場合
施行規則に「すみやかに証明をしなければならない。」とあることから何でも証明しなければならない訳ではありません。
労働者災害補償保険法施行規則第23条の2では、事業主が労働基準監督署に意見を申し出ることができる旨を規定しています。
つまり、証明できない部分があればその旨の意見を付して労働基準監督署に請求書を提出すればいいということです。
具体例としては次のような対応を実施することになります。
・異議がある項目の番号を二重線で消去する。
・証明できない理由を文書で作成し、請求書の別紙として提出する。
手間を惜しんで安易に証明しないことが重要です。
おわりに
異議がある場合には労働基準監督署から詳細確認の連絡が来ることが多いです。
その場合でも会社側は真摯に対応し、協力する姿勢を労働基準監督署に見せることが大切です。
従業員からの労災請求にかかる証明依頼は門前払いせず、まずは受け取ること。
そして、証明できない部分があれば正直に意見を申し立て、労働基準監督署に提出すること。
これを確実に行うことがリスク予防にもつながります。

