2025年度の最低賃金の答申を受けて会社が実施すること

各都道府県の答申が出揃う

2025年9月5日、厚生労働省から各都道府県の地域別最低賃金の答申に関するプレスリリースが発行されました。

引き上げ額もさることながら、発行日(予定)のバラつきも著しく、印象に残る年度となりました。

8月16日に投稿したコラムにも書いたように、答申=決定ではありません。

これを確認するには、各都道府県労働局のホームページをご覧になることがよろしいかと思います。

ホームページのチェックポイント

最低賃金は答申ではなく、決定を受けて官報に公示されることで正式な決定となります。

例えば本コラムを執筆中の9月11日時点で既に公示を終えている東京都では、次のタイトルでホームページに掲載しています。

東京都最低賃金を1,226円に引上げます

これにより東京では2025年10月3日(金)から地域別最低賃金1,226円になることが決定したということです。

各都道府県労働局によって表現は異なるものの、「決定」「公示」というワードを確認しましょう。

自社の賃金が最低賃金を下回らないか確認

最低賃金を下回ってはならないことは、憲法ならびに法律(最低賃金法)に規定されています。

法令遵守の観点から、発行日までに自社の賃金が最低賃金を下回らないように確認しておく必要があります。

主に次の2ステップで確認を進めていくこととなります。

①最低賃金に含めることができる賃金と含めることができない賃金を把握する。
②月給、日給、歩合給それぞれの最低賃金の計算方法を把握する。

①の把握方法

概ね「基本給」と「各種手当」を足した賃金額が最低賃金の基礎額となるイメージでよいでしょう。

注意点として、次の賃金はその基礎額に含めることができないということが挙げられます。

【最低賃金の基礎額に含めることができない賃金】
(1)臨時に支払われる賃金(例:慶弔金など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与、一時金など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(例:時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(例:休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(例:深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当、家族手当

よくあるお問い合わせとして、(6)は名称ではなく実態(性質)によって判断します。

②の把握方法

最低賃金は時間当たりで求められることから、時間単価に換算する必要があります。

1:月給の場合
  (1)毎月の所定労働時間が固定の場合
    ①で算出された基礎額÷1箇月の所定労働時間
  (2)変形労働時間制を導入している場合
    ①で算出された基礎額÷1箇月の平均所定労働時間
    1箇月の平均所定労働時間は、1年間の労働時間数÷12箇月で算出します。

2:日給の場合
    ①で算出された基礎額÷1日の所定労働時間

3:歩合給の場合
  (1)完全歩合給の場合
    ①で算出された基礎額÷月間総労働時間
  (2)固定給と歩合給の併用の場合
    A:固定給部分=固定給÷1箇月の平均所定労働時間
    B:歩合給部分=歩合給÷月間総労働時間
    ➡A+B≧最低賃金になればOK

おわりに

冒頭に述べたように、2025年度の最低賃金は各都道府県で大幅に発行日が異なります。

都道府県を跨いで事業所を要している会社様は、特に注意を要します。

また、下限を引き上げるだけでは会社内における賃金バランスが崩れるおそれもあります。

なお、厚生労働省では最低賃金に関する特設ページがありますので、こちらも参照されることをお勧めします。

当事務所では、最低賃金に関するご相談もスポットでお受けいたしますので、地域問わずお気軽にお問い合わせください。