労使トラブル(能力不足編)

はじめに

よくあるご相談の一つに「能力不足の従業員をどうしたらいいか」というものがあります。

会社としては、費用や時間をかけても改善せず、他の従業員の意欲を低下させてしまう従業員の扱いに困ることはよく理解できます。

そして十分な対策を講じることなく解雇や雇止めをしてしまい、労使紛争に発展することもよくあります。

今回は、能力不足の従業員対応について簡単にお話したいと思います。

指導や教育の記録化

能力不足であったとしても、会社には雇用契約上、指導や教育をする責任が発生します。

よくある事例としては、「指導や教育を実施したが、それが記録に残っていない」ということがあります。

これは、訴訟などに発展した場合に大きなマイナスポイントになります。

会社には「指導や教育を十分すぎるほど実施したが、まったく改善が見込まれない」という事実を立証しなければならないからです。

そしてこの事実を認めてもらうにはかなり高いハードルがあることを認識しておく必要があります。

指導や教育、注意をしたらなるべく早く記録に残しておくことがリスク抑止と後の負担軽減につながります。

適正な指導

会社と能力不足の従業員の関係が悪化している状態になっていることもあります。

このとき感情的な指導をしてしまうことでパワーハラスメントと言われる可能性も高まります。

基本的には冷静に淡々と改善点や具体性を指摘することです。

万が一感情的になってしまった場合は、日をあらためる、メールで伝える、担当者を一時的に変更するといった措置を講じるといいでしょう。

また、担当者の負荷も相当なものになるため、チームで協力して対応することが望ましいです。

能力の適正把握

ある程度の規模の会社になると、いくつかの職種や部門があると思います。

このような会社であれば、可能な限り能力適正に見合った配置転換等を実施することが望ましいです。

例えば職種や配属先を限定していない従業員であれば、会社が適正な人事権の範囲で異動させる努力も求められると考えておくほうが妥当でしょう。

試用期間

仮に能力不足の従業員が試用期間中だったとしても、本採用の拒否(解雇)が安易に認められるということではありません。

実際に能力不足を理由とする本採用拒否が無効であるという裁判例が多くあります。

裁判例も会社の指導、教育、注意が不十分という背景があるので、いかにこれらが重要であるかがわかります。

試用期間中に能力不足が表出した場合、まずは試用期間の延長などを検討するほうが良策です。

おわりに

能力不足は数日の対応で解決できるものではありません。

また、対応を恐れるあまり能力不足を看過してしまうことで、優秀な人材が離職することにもつながりかねません。

しっかりと手順を踏んでリスクを最小限に抑えるようにしましょう。

必要に応じて専門家(社会保険労務士、弁護士)にご相談されることもお勧めします。