労使トラブル(中途採用編)
きっかけは採用前から始まっている
昨今の著しい人手不足に悩みを抱えている企業が多く見受けられます。
そこに輪をかけるように採用後すぐにトラブルへ発展する事例も多数あります。
背景には、人手不足を少しでも早く補うため、採用前に次のような状況が挙げられます。
・採用基準を下げてしまう。
・書類審査や面接を吟味せず通過させてしまう。
このようなことからミスマッチが始まってしまうのです。
採用基準引き下げのリスク
採用基準を下げてしまうことにより生じるトラブルの代表例は、能力不足です。
「書類や面接ではわからなかった」「こんなはずではなかった」と感じても、
基本的には会社に教育や育成の義務が生じ、雇用する以上は人件費がかかります。
教育や育成に膨大な時間と費用をかけて成長や改善すればいいですが、
必ずしもそのような結果にならないこともままあります。
その際に能力不足を理由とする解雇や雇止めを検討することとなりますが、
これは難易度が高く、簡単にできることではありません。
現在の人手不足と将来のトラブルリスクを天秤にかけて採用基準を見直してみてください。
書類審査や面接の簡素化によるリスク
書類(履歴書・職務経歴書など)を見た上で求職者と直接話をして得る感覚はとても重要です。
特に昨今では次のような部分を書類や面接で把握していくスキルが会社に求められます。
・本人ができることと会社が任せたいことの刷り合わせ。
(「やりたい」ことより「やってきたこと」を把握する)
・応募者のストレス耐性を感じ取る。
(言葉の端々や書類から伝わるものもある)
・意思疎通の程度感を把握する。
(質問に対する受け答えで読み取れることがある)
これらを軽視してしまうことで、採用後のメンタル不全による休職や退職トラブルの可能性が高くなります。
また、指示や伝達すら困難になってしまい、問題社員化してしまうおそれもあります。
僅かな時間を惜しんだ結果、数年にわたってトラブルに対応し続けなければならないリスクが考えられます。
リスクを抑止するために
人手不足(売り手市場ともいいます)だからといって、「会社が選ぶ」という本質を見失ってはいけません。
選んだ(採用する)からには、以降の労務管理における責任の所在は会社にあります。
言い換えると内定を出すまでが会社が広範囲に裁量をもって選択できる数少ない機会です。
その機会を見極めるためにも、採用担当者に研修やセミナーを受講させるなど検討してみてください。
また、採用を承認する立場の方々も第三者の目線で採用担当者の起案を精査しましょう。